2014年10月9日木曜日

奈良の若手弁護士が五條に事務所開設 奮闘の日々

 長く弁護士不在だった奈良県五條市に今年1月、弁護士事務所「五條本町法律事務所」が誕生した。立ち上げたのは、昨年弁護士登録したばかりの若手弁護士、北本嘉弘さん(29)。近隣の野迫川村や十津川村にも出張し、地元の人のパワーに“圧倒”されながらも、日々奮闘している。

  国道24号沿いに建つ事務所の内装は白で統一され、ジャズが流れる落ち着いた雰囲気。堅苦しいイメージを持たれがちな弁護士事務所に少しでも入りやすいムードをつくることで、「相談者がストレスを感じずにリラックスして話せる場所」を目指しているという。

 北本さんは奈良県大和高田市出身。平成20年に大学を卒業後、金沢大法科大学院へ進学。24年、司法試験に合格し、奈良で1年間の司法修習を終えた後、昨年弁護士登録した。修習中、五條市が弁護士のいない「空白地」になっていることを知り、母の実家もあったことから、五條での事務所開設を決めたという。

 奈良弁護士会によると、五條市には平成14年、弁護士法人が支所を開設。これにより、県内では3つの地方裁判所の管轄区域(本庁、葛城支部、五條支部)すべてに登録弁護士がいる状態となったが、この支所は昨年2月に廃止した。そこに北本さんが事務所を開設したことで、「空白」は1年ぶりに解消された。

 まだ事務所開設から1年もたっていない北本さん。のどかな山間地域の県南部に流れる「独特の時間」や、地域の人々の距離感に最初は戸惑いもあったが、今は楽しんでいるという。

 頼れる相談先を探し求め、突然事務所のドアを開けて「話を聞いてほしい」と訪れる相談者。最初は、「予約なしに来るなんて…」と思ったと振り返るが、相談者が置かれた状況や心情を聞く中で、「話を聞いて、相談者の心が少しでも和らぐのなら、それも大切な弁護士の仕事のひとつ」と思うようになったという。

 親権をめぐる相談で祖母と訪れた高校1年生の孫には、定期試験に向けた勉強を教えたことも。「弁護士は相談者の私生活をすべて知り、喜怒哀楽もともにする。やりがいを感じるが、それだけ責任は重い」と気を引き締めている。

 人々との交流の中で願うことは、弁護士を志したときと変わらない思いだ。「地域の人々が争いごとがなく仲良く暮らしていけるよう、お手伝いをしたい」。県南部の小さな事務所で、若手弁護士の奮闘が続いている。

参照:産経新聞

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