2014年8月1日金曜日

<金商法>25年払い「引き渡しは118歳」 高齢者を標的

 金を手にできるのは118歳の時--。こんな理不尽な金の長期購入契約を判断能力が低い高齢者に結ばせたとして、大阪府の男性(94)側が東京の貴金属販売会社側を大阪地裁に訴え、途中まで払った約330万円全額の返還で和解した。高齢者に長期の分割払いで金を買わせるトラブルが増えており、弁護士や消費生活センターは注意を呼びかけている。

  訴訟の原告側代理人によると、1人暮らしの男性は2012年11月、自宅を訪れた販売会社の従業員に金の購入をしつこく勧められ、金2キロを約950万円で購入する契約を結んだ。「名義人は若い人でないとだめ」と言われ、親族の名義を借りて契約した。

 代金は25年の分割払い。全額を払い終えた時だけ、金の所有権が発生し、現物を手にすることができるという条件が付いていた。

 男性は13年1月に金1キロ、4月にプラチナ0・5キロを同様の条件で追加購入する契約を同じ業者と結んだ。契約の総額は計約1700万円に膨らんだ。他に、契約手数料約180万円、口座管理費として年9万円を請求された。

 13年秋、契約の名義人になった親族が男性宅を訪れた際、契約書を見て驚いた。「詐欺ではないか」。親族が金の返還を求めたが会社側は応じず、逆に約95万円の中途解約金を請求してきた。

 男性側は今年3月、大阪地裁に提訴した。直後に男性は亡くなったが、会社側はこれまでに受け取った約330万円全額をこの親族ら遺族に返す意向を示し、和解が成立した。

 親族の代理人は「118歳で金を受け取るのを前提にした異常な契約で悪質だ」と話している。販売会社は「答える必要はない」としている。

 ◇同種トラブル、昨年急増

 高齢者に20年以上などの長期分割払いで金を買わせる悪質な手口は最近、目立ち始めたとされる。契約時の金額を払い終えない限り、金の所有権が発生しないとする条件を付けるのが特徴だ。弁護士らは「仮に完済しても金が手に入るかどうか不透明で、詐欺の可能性が高い」と注意を呼びかける。

 国民生活センターによると、同種のトラブル相談は2009年度は1件だったが、昨年度は190件に上った。契約者の大半が高齢者で、分割払いが終了する際の年齢が100歳を超えているケースが少なくないという。

 業者は高齢者宅を訪問し、「金融不安だから金を持っておくといい」「相場が上がっているから金は必ず値上がりする」などと勧誘する。契約時や解約時の手数料が高額なのも特徴という。

 大阪弁護士会の弁護士ら約10人は対策弁護団を結成、これまでに東京や大阪の3業者を相手取り、5件の訴訟を起こした。契約金額が1億円を超えるケースもあった。いずれも業者側が受け取った全額を返還することで和解した。

 弁護団の森田泰久弁護士は「判断能力が低い高齢者を標的にしたケースが多い。家族や親族が注意してあげてほしい」と話している。

参照:毎日新聞

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