2014年7月11日金曜日

【弁護士が解説】有罪率99%超! 痴漢に間違われたらどう対処すべき?

 満員電車で通勤するサラリーマンにとって、痴漢冤罪はいつ身に降りかかるか分からないリスクといえるだろう。疑われたときの対処法はたびたび話題に昇るテーマだが、いったいどうすればよいのか。『マンガで分かる「この人痴漢です!」といわれたら』(Amazon Services International, Inc.)を発刊した、弁護士法人アディーレ法律事務所の鈴木淳也弁護士にお話を伺った。

■逮捕されたらどうなる?
 一般的には駅の事務室へ連れて行かれたのちに、警察へ身柄が引き渡されます。逮捕後は原則的に、警察は48時間以内に検察へ送致しなければなりません。ただ、勾留請求が裁判所で認められた場合は、最長で20日間延長できるため、当初の48時間を含めれば長期間身柄を拘束される可能性があります。

 そして、勾留期間が満たされたあとは、検察が起訴か不起訴かを決めます。起訴された場合は「通常の裁判」と、簡素な手続きで罰金刑を科す「略式起訴」の二通りが考えられます。自治体ごとの「迷惑防止条例違反」に該当する場合は「略式起訴」になる可能性が高いです。ただ、「強制わいせつ罪」に該当するときは、有罪率が99%超という刑事裁判の現状からほぼ間違いなく有罪となります。初犯ならば執行猶予となり釈放されますが、逮捕時点から数えれば既に2~3カ月が経過していることもあります。

 また、不起訴の場合は、捜査により有罪に繋がりうる証拠が集まらなかったという「嫌疑不十分」と、被害者との示談成立による「起訴猶予」の二通りになります。


■駅のホームで「痴漢だ!」と叫ばれたらどうすべき?
 駅の事務室には行かず、なるべくその場で弁護士を呼んで下さい。よく「名刺などを渡してその場を立ち去るのがよい」といいますが、あまりおすすめできません。逃走すれば逮捕の可能性が高まりますし、結局、駅の事務室に連れて行かれればベルトコンベアのように裁判まで流れてしまう危険性もあるからです。

 知り合いに弁護士がいればその方を、いなければ知っている弁護士事務所の名前を伝えて下さい。心当たりがなければ「当番弁護士を利用する」と駅員や警察官に伝えましょう。弁護士会所属の当番弁護士は、刑事手続きの流れや黙秘権、自白のリスクなどを説明してくれるほか、会社や家族への連絡も請け負ってくれます。
 
 また、罪を認めないというのが何よりも大切です。警察からの取り調べは厳しく、自白すれば身柄が開放されるという思いから誘導される方も少なくありません。自白の内容は刑事ドラマなどでもたびたび聞かれる「調書」に記録として残ります。やがては裁判の証拠となり、証言をくつがえそうとすればかえって裁判官の心証を悪化させます。


■勤務先への説明は弁護士から
 長期間にわたり身柄が拘束されれば、勤務先への説明も必要になってきます。会社を長期間休むというのはよほどのことでもあるので、本人や家族の意思を尊重しながら弁護士から事情を説明するのが一般的な流れです。冤罪の場合は特に、事実無根であることや、濡れ衣を着せられないよう争っているため警察や検察に長期間拘束されていることなどをふまえた上で、出勤ができない理由をこまかくていねいに上司へ伝えます。


■経済的に依頼が難しい場合?
 逮捕後の48時間以内は、弁護士のみが接見を許されています。たとえ親族であっても会うことはできません。また、前述の当番弁護士は一度しか派遣されないので、なるべく刑事弁護に強い弁護士に連絡を取れるようにして下さい。尚、刑事弁護人は配偶者や兄弟、親族などの家族でも選べますが、知人には選任権がありません。

 経済的に弁護を依頼するのが難しいときは、国による「国選弁護制度」があります。ただ、痴漢や盗撮などの迷惑防止条例違反では、被告人となるまでは付けることができません。そのため被疑者段階では、法テラスの「被疑者弁護援助制度」を活用するなどして、刑事事件を専門に扱っている方へ依頼するのがよいでしょう。

 疑わしきは罰せず。刑事裁判の原則といわれるが、有罪率99%超といわれる現状では、逮捕されればほぼ間違いなく犯罪者としての濡れ衣を着せられてしまう。たとえ事実無根であっても世間の目は厳しく、逮捕されれば社会的信用を失うだけではなく、かけがえのない膨大な時間まで奪われることになりうる。万が一のときは自分一人だけで解決しようとせず、法律の専門家である弁護士の力を借りるのが望ましいようだ。


参照:ダ・ヴィンチニュース

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