2014年6月19日木曜日

遺言書の現実 遺留分や相続税について考慮されたものは少ない

 相続税の増税(改正)まで約半年となりました。巷では、“相続”が非常に盛り上がっており、ビジネス雑誌、週刊誌をはじめワイドショー等でも多く取り上げられています。  

 “相続”における最近のキーワードは“相続税増税”と“争族(あらそうぞく)”です。多くの媒体がこの2つのキーワードをタイトルとした特集を組みます。

  相続税の増税は、相続税法が改正され、最高税率が世界最高の税率に設定されることや、基礎控除額が4割カットになる等と一昨年末あたりから話題となりました。

 そして、同様に注目されているのが、“争族”。増税により、相続人間における悩みや、遺産分割で紛争等となる件数は多少、増加する一因になるかもしれませんが、“争族”問題は、昔からある問題でした。この問題は、民法の改正により家督相続から均分相続へと変化したことに由来し、相続人間の中でも、家督相続という文化が未だ残っていることにはじまり、更には、超高齢化社会に起因される“介護”も重大な要素となります。

 冒頭のように“相続”は、今や様々な媒体にとりあげられていますが、年間に500件を超える相続のご相談を受ける中で、日々感じることは、“相続”の難しさであり、奥深さです。一言で“相続”や“相続財産”といっても、その分野は民法上の話なのか、税法上の話なのかで答えは全く異なります。同じ“相続人”や“相続財産”という言葉でも民法と税法では、定義が異なる等ということをご存知の方は多くはありません。

 よく、「私には財産が無いから相続なんて無縁」(1) や「うちは子供達の仲が良いから」(2) 等という言葉を耳にします。おそらく、(1) の方は、相続税を納税する程、財産が無いという真意でしょう。では、遺産分割でお子さんたちが揉めるという事は無いのでしょうか。(2) の方は、お子さん達の仲が良いから遺産分割では揉めないだろうという真意でしょう。では、本当に揉めないのでしょうか。また、果たして、相続税については、きちんとシミュレーションができているのでしょうか。

 一昔前とは異なり、“グーグル先生”等と揶揄されるように、あらゆることがインターネットにより解決される時代へと変化し、士業・専門家の過多・デフレが相まり、その存在さえも揺るがされるような時代となりました。

 最近は、“遺言”についての特集も多く組まれています。では、実際に遺言を作成する際に、皆さんは、どなたに依頼をされますか。インターネットで検索すると多くの弁護士・司法書士・行政書士等の法律の専門家から諸々の説明がされています。そして、多くの専門家は、遺言を作成する最大の目的として円満な遺産分割を挙げています。

 しかし、私がこれまで多くの相談者から開示していただいた遺言書には、分割についての遺言者の意思は明確に記載がありますが、その内容に遺留分について考慮された形跡が伺える遺言書は、あまり多くありません。さらには、相続税について考慮された形跡は、皆無に近いという現実です。

 つまり、遺言書を作成する場合は、遺言者側の意思を組むことは当然ですが、法律だけでなく、税務をはじめ、相続する側が将来どのような気持ちで相続したり、遺産分割するのかを考慮する必要があります。

 確かに、遺言書によって、相続手続き・遺産分割自体は、スムーズに進むかもしれません。しかし、実は、その後、相続人間の関係は悪化するという事例は珍しくありません。そのため、遺言書を作成する場合は、法律や税務はもとより、相続人達の心情や将来的な生活迄を熟慮する必要があります。

 “相続”が一言では片づけられない奥深さというのは、つまりは、“相続”が単に1つの分野だけでなく、様々な分野が関連し、更には、それぞれの人・時代・家庭・文化・価値観が大きな影響をもたらすからではないでしょうか。

参照:マネーの達人

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