2014年4月25日金曜日

苦境の母校、存続訴え 静岡大法科大学院卒の弁護士

 司法試験合格率や入学者数の低迷などで厳しい状況にある地方の法科大学院。静岡大法科大学院(静岡市駿河区)も他大学院との広域連携を模索する中、同大学院の存続を訴える卒業生がいる。裾野市で3月、法律事務所を開業した弁護士鈴木秀忠さん(30)。中学からの不登校を乗り越えながら夢をかなえた1期生だ。「このままでは自分と似た境遇にある若者の夢が絶たれてしまう」。鈴木さんは危機感を募らせる。


  鈴木さんは浜松市北区出身。中学1年の2学期に不登校になり、高校課程も通信制で学んだ。「規則や集団行動を重んじる学校生活になじめなかった」と振り返る。

  転機になったのは自宅で見た放送大学の法律や憲法の講義。自由や平等には一定のルールが必要と学び、学校に反発していた自身を見詰め直したことが、法律家を志すきっかけになった。

  一念発起して静岡大に合格し、2005年には学内に新設された法科大学院に進学した。09年、2回目の挑戦で司法試験に合格した。その後は勤務弁護士を約3年間経験し、今年3月に“弁護士空白地”だった裾野市で独立した。「弁護士の都市部偏在を改善し、地域に寄り添う活動をしたかった」と言う。

  自らの経験から地方の法科大学院の先行きが気掛かりでならない。文部科学省は現在、業績が改善しない法科大学院の統廃合を視野に入れ、態勢の見直しを進めている。法科大学院設置前から実績があり、学生も集まりやすい首都圏などの有力大と比べ、地方の状況は厳しい。静岡大も現在、山陰法科大学院(松江市)など複数の大学院と広域連携を模索中だ。

  「もし、県内に法科大学院がなければ、自分は弁護士になれなかったかもしれない」と鈴木さん。文科省の方針に首をかしげ、「首都圏の学校に通えない地方の法曹希望者の夢が絶たれかねない。長い目で人材育成を考えてほしい」と訴える。

 法科大学院 法律家の将来的な需要増を見込み、弁護士や裁判官、検察官を地方で育成するため2004年度以降、全国で74校が開設された。国は当初、修了者の司法試験合格率が7~8割に向上すると想定したが、13年は26・8%と低迷。入学者数も13年度は64の大学院で定員割れした。文部科学省は昨年11月、各大学院を業績によって5段階に分類し、最低ランクは15年度の補助金を半減、16年度以降は他校と連携しない限り、原則ゼロにする方針を明らかにした。撤退の動きが加速し、16の大学院が廃止・募集停止を表明している。

参照:静岡新聞社

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