2013年10月28日月曜日

メニュー表示 法規制抜け穴 「料理」適用例も鮮魚の定義もなし

 阪急阪神ホテルズ系列のレストランでメニューと異なる食材が使われた問題は、満を持して行ったはずの社長会見も説得力を欠き、事態収拾の兆しが見えてこない。安価なバナメイエビをシバエビとして提供しながら「偽装ではなく誤表示」と強調する姿勢は、少なくとも消費者感覚とはかけ離れている。問題は他のホテルにも波及しているが、メニュー表記に厳格な法規制がないのが現状だ。

 ◆「船場吉兆」と違い

 産地偽装をめぐっては、不正競争防止法に罰則規定がある。みそ漬けの牛肉産地を偽った料亭「船場吉兆」も、同法違反罪で関係者に刑事罰が科されている。

 今回、阪急阪神が問題を公表した47品目のうち、こうした産地偽装などで同法に抵触する可能性があるのは25品目。代表的なのは「霧島ポーク」「沖縄まーさん豚」「九条ねぎ」と表示しながら他県産のものを使用していたケースだ。

 ただ同法の対象は、市場に流通している「商品」の場合が多く、レストランで提供される「料理」に適用された例はほとんどないとみられる。

 ◆JAS法は対象外

 産地偽装でないとしても、冷凍保存した魚を解凍して「鮮魚のムニエル」などと提供していたのは、消費者からすれば違和感は強い。しかし食品表示を規定したJAS法に鮮魚の定義はなく、ただちに違法とはいえない。

 逆に同法が言う「生鮮食品」には解凍した魚が含まれ、食品衛生法上も冷凍の魚は「鮮魚介類」に分類されているほど。

 JAS法の対象は主に容器・包装の状態でスーパーなどで小売りされる食材、加工食品。レストランメニューは詳細な表示基準を定めた同法の枠外にある。

 結局、適用されるのは、不当表示から消費者の利益を保護する景品表示法。実際よりも著しく優良であるかのように装い、不当に客を誘導する「優良誤認」があったか否か。消費者庁はこの観点から事実関係を調査している。

 ◆偽装と区別されず

 食品偽装問題に詳しい関西大の郷原信郎特任教授も「鮮魚」については「今の冷凍技術を考えれば、解凍した魚に鮮度がないとは言い切れない」との見解。ただ、ブランド食材をうたいながら産地が違う品目は「優良誤認」にあたる可能性が高いとする。

 一方、食品表示に精通する石川直基弁護士(大阪弁護士会)は、「飲食店のメニューに厳格なルールがないのが問題」と早期の法整備を訴える。

 阪急阪神の出崎弘社長らホテル側の責任者は「誤表示」と主張。利益優先の意図的な偽装ではないと譲らなかった。ただ、そもそも不正競争防止法、JAS法、景品表示法のいずれも誤表示と偽装を区別しているわけではなく、事実関係を問題としている。誤表示と言い張ることは、法的には意味がない。石川弁護士は「阪急阪神に商道徳の問題があったのは明らか。『誤表示』と強弁するところに、食品表示の軽視が透けて見える」と批判した。
 
参照:産経新聞

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