2013年7月30日火曜日

見通しが甘かった? 法科大学院の厳しい実態

弁護士や裁判官など「法曹」(法律家)になるための司法試験は現在、原則として法科大学院を修了することが受験資格となっている。しかし、一部の大学院では廃止や学生の募集停止を決定、政府の検討会議も司法試験合格者の増員方針を撤回するなど、法科大学院を取り巻く環境は厳しさを増しているという。教育ジャーナリストの斎藤剛史氏が解説する。


■実践的な法曹の養成を行う目的でスタートした法科大学院
法科大学院は、実践的な法曹の養成を行う目的で、2004(平成16)年度からスタートしました。創設当初は、修了者の7~8割が司法試験に合格できるとされていたため人気を博し、平均志願倍率は13.0倍を記録しました。ところが、実際には法科大学院を修了しても法曹になれない者が大量に出現して人気が急降下し、志願者数が激減。姫路獨協大学法科大学院が2015(平成25)年度に廃止となったほか、国立の島根大学を含む7校も、既に学生の募集停止を実施または決定しています。

■法科大学院がつまずいた大きな理由は
法科大学院がつまずいた大きな理由は、二つあります。一つは、政府の予想を超えた和の法科大学院が誕生したことです。文部科学省は法科大学院の設置認可を抑制しなかったため、74校(今春の学生募集校は69校)、ピーク時には入学定員が5,825人(今春は4,261人)にまで増えてしまいました。

もう一つの理由は、司法試験合格者の増員ができなかったこと。政府が「年間3,000人程度」を目標に増員するはずだった司法試験合格者は、関係団体の強い反対などから年間2,000人程度のまま据え置かれています。さらに、最近では弁護士になっても採用してくれる法律事務所がないなど「弁護士過剰」が問題となっているのが実情で、合格者増員は見込めない状態です。政府の「法曹養成制度検討会議」も、司法試験合格者を「年間3,000人程度」にするという目標が「現実性を欠くもの」として、事実上の方針撤回を求めました。

■つけは国民に?
政府の見通しが甘かったのか、法科大学院を設置した大学が安易だったのか。いずれにしろ、そのつけは国民に、ということだけにはしてほしくないものです。
 
参照:ベネッセ教育情報サイト

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