2013年7月24日水曜日

法科大学院、何が問題になっているの?

 かつて司法制度改革の柱のひとつとして創設された法科大学院が、入学定員割れに苦しんでいます。2013年度の全国の法科大学院志願者は1万3924人。制度が発足した2004年度の志願者数(7万2800人)の2割に満たない数字です。

 こうした状況を受け、東北学院大、大阪学院大が2014年度からの募集停止を決めたほか、龍谷大も2015年度以降の募集停止を検討中です(産経新聞7/8付)。いま、法科大学院に何が起きているのでしょうか。


司法制度改革の目玉だった
 法科大学院は、2001年に司法制度改革審議会が内閣に提出した意見書をきっかけに生まれました。同審議会は、「今後、国民生活の様々な場面において法曹に対する需要がますます多様化・高度化する」と予測。増大する需要に応えるため、当時は年間1000人程度だった司法試験合格者数を、2010年頃までに年間3000人程度に増やすべきだと提言しました。

 これを受けて、政府は司法試験制度の刷新に着手。法律家養成に特化した教育機関として法科大学院を創設し、その教育内容を踏まえた「新司法試験」を2006年度からスタートさせました。6年間の移行期間を経て、2012年に新司法試験への切り替えが完了しています。

 新司法試験は従来の司法試験と異なり、法科大学院を修了するか、もしくは司法試験予備試験に合格しなければ受験できません。これにより、法律家をめざす人は原則として法科大学院に入学することになりました。法科大学院には、質の高い人材を法曹界に安定して送り出す役割が期待されていたのです。

司法試験の合格率は約25%
 前述の意見書は、法科大学院修了者の約7~8割が司法試験に合格すると見込んでいました。しかし現実には、新司法試験の単年度合格率は2006年度の48.25%をピークに下がり続け、2012年度は25.06%となっています。

 その背景には、法科大学院の乱立があります。全国の法科大学院は74校。学校による教育水準の格差は大きく、教育内容に課題のある法科大学院も数多くあるとみられます。

 司法試験は、法科大学院を修了した後、3回までしか受験できません。そのうえ合格率が低いとなれば、入学に二の足を踏む人が増えるのも当然といえるでしょう。

 また、法律家の需要がかつて想定したほど増えなかったことも、制度設計の誤算でした。近年の司法試験合格者数は2000~2100人程度で推移しており、目標としていた3000人には及ばないものの、10年前と比較するとほぼ倍増しています。その結果、司法試験に合格しながらも弁護士事務所などに就職できないといったケースが急増しています。

 こうした現状を踏まえ、2013年6月26日、有識者でつくる法曹養成制度検討会議は、法科大学院に自主的な定員削減や統廃合を求めることを提言。7月16日、政府はこれを了承し、「年間3000人程度の司法試験合格をめざす」という目標を正式に撤回しました。

 制度設計から10年以上の歳月が過ぎ、ようやく行われた政策転換。今後、法科大学院のあり方については、文部科学省の中央教育審議会に設置された法科大学院特別委員会で検討されることになります。
 
参照:THE PAGE

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