2013年7月22日月曜日

2010年に経営破綻した武富士。法廷で明らかになったブラック企業ぶり

消費者金融最大手として権勢をほしいままにしながら、2010年に経営破綻した武富士(現・TFK)。その創業一族・武井家に対する訴訟の証人尋問が7月5日、東京地裁で行なわれた。

そもそも、この訴訟は武富士から受け取れるはずだった利用者の過払い金が、同社倒産のため大幅減額されてしまったことに端を発している。創業者の故・武井保雄氏と次男で元副社長の健晃(たけてる)氏には違法経営によって会社を倒産に至らせた責任があり、業務を引き継いだ新会社が過払い金を満額返金できないのなら、不足分は創業家の私財から支払うべき――そう考えるかつての過払い金返還請求者約3000人が各地で集団訴訟を起こし、ようやく証人尋問にまでこぎつけたのである。

当日、法廷に設置された計44の傍聴席は全国から集まった原告やその代理人で埋まり、それでもまだ外に人があふれるという異例の熱気のなかで尋問が始まった。

証人として登場したのは武富士の元社員で、ともに支店長経験がある男女各1名。彼らによって語られた驚きの証言のごくごく一部を引用すると……。

「全国の各支店には、武井保雄元会長の写真が飾ってありました。社員はその写真に向かって出勤時と退社時、挨拶をさせられます」

「昇給、昇格、賞与支給、社員研修などの際には、会長や支社長らに『お礼の手紙』を書かされました。手紙を出したかどうかは本社でチェックされ、届いていないと叱責の電話が職場にかかってきました」

「貸し付けや回収のノルマを達成できないと支店長は会議に呼び出され、上司からさまざまな罵声を浴びせられます。そして、会議に出席している同じ立場のほかの支店長にも、対象者を非難するよう強要するのです。もし発言できなければ次は自分がやり玉に挙げられるので、仲間を罵らなければなりませんでした」
「会長の次男である健晃氏が取り巻きを引き連れ、全国の支店を抜き打ちで訪問検査することを臨店といいます。臨店時の健晃氏は支店従業員に対し、『おめえ、武富士の看板がなかったらただのチンピラだろう』など、暴言の限りを尽くします。それでも社内における武井一族の存在は絶対的なものですから、黙って耐えるしかありません。彼はイヤミたっぷりに支店社員の肩を揉みながら、『世界のフォーブス(世界長者番付を発表するアメリカの経済誌)に載る億万長者の御子息に肩を揉んでもらってるんだぞ。ありがたく思え』と言ったこともあります」

「私は健晃氏の臨店時、彼の取り巻きに暴行されてけがを負いました。その事件を刑事告訴すると、今度は武富士によって実家に盗聴器を仕掛けられたのです」

「回収ノルマ達成のため、返済が困難な顧客の場合は、本来支払いの義務がない親族や友人、知人に返済させたり、それでも無理なら担当社員自身が身銭を切って立て替えたりしていました」

「課せられたケタ外れのノルマ数字をクリアするため、信用情報データを改竄(かいざん)してお客さまの返済能力を超える額を貸しつけ、逆に延滞顧客には執拗に督促電話をかけることを、誰もが上司から命じられていました」

法廷では、往時の武富士の常軌を逸したブラック企業ぶりと、常態化していた無法営業の数々が明らかになったのである。

原告側弁護団の一員である及川智志(さとし)弁護士は、「武富士という企業の非道ぶりや業務の過酷さが、実感として裁判官に伝わったはずです」と、今回の証人尋問に確かな手応えを感じている。

そして、来たる8月30日の本人尋問にはいよいよ巨悪の象徴、武井健晃氏が出頭する。今も東京都内の豪邸でのうのうとセレブ生活を送る彼は、法廷の場でいったい何を語るのか?
 
参照:週プレNEWS

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