2013年2月25日月曜日

改正労働契約法 -定年延長法に盲点、契約社員に大チャンス

 今年4月から改正労働契約法が施行される。目玉は、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、無期労働契約に転換できる「5年ルール」だ。対象は、契約社員やパート、アルバイト、派遣、嘱託などの有期契約労働者(派遣社員は派遣元との労働契約が対象)。1年契約を繰り返して更新しているケースなら、5回目の更新後に無期転換の権利が発生する。契約期間中に労働者が申し込めば、契約期間終了後に無期労働契約に切り替わる。今年4月以降に結ばれた有期労働契約に適用されるため、5年ルールで無期転換する人が現れるのは2018年4月以降だ。

 正社員として働きたくても働けなかった非正規労働者にとって、5年ルールは心強い味方だろう。ただ、ここにきて意外な問題が浮上している。5年ルールにより、企業が正社員を一生雇わなくてはいけなくなる可能性が指摘されているのだ。

 これには今年4月から施行される改正高年齢者雇用安定法が関係している。改正法は、厚生年金の支給開始年齢引き上げにあわせ、60歳の定年後も希望者全員が原則的に65歳まで継続雇用される制度の導入を企業に義務づけている。これによって正社員は定年後も有期社員として働くことが可能になった。

 じつは5年ルールは、再雇用の有期契約にも適用される。定年後に再雇用された有期社員が5年を超えて働けば、無期社員に返り咲くことができるのだ。

 しかも復活社員は65歳以上なので、60歳定年制が適用されない。復活社員は、法律上は定年がない“終身社員”として、死ぬまで雇用される権利を手に入れることになる。

 今回の改正の目的は、生活が不安定な非正規労働者を救うことにある。しかし、このままでは年金世代まで必要以上の保護を受けることになってしまう。

 無期転換の権利が発生する前に、ぴったり5年で更新をやめればいいという考えは甘い。有期契約を繰り返して更新すると、労働者に「更新期待権」と呼ばれる権利が発生し、雇い止めが無効と判断される場合がある。定年後の再雇用にも更新期待権は認められている。いきなりの更新停止はトラブルのもとだ。

 では、企業は再雇用後の無期転換を受け入れるしかないのか。労務問題に詳しい向井蘭弁護士は、こう解説する。

 「再雇用契約は上限を65歳の誕生日までとして、通算5年を超えて再雇用契約を更新しないことを就業規則と契約書に明記したほうがいい。ただ、契約書も万全ではありません。同じ契約なのに、『Aさんは5年で雇い止め。仕事ができるBさんは65歳を超えても契約更新』と差をつけると、裁判で契約内容が反故にされることがあります」

 これは再雇用に限らないが企業が“前門の虎、後門の狼”式で契約を結ばせた場合も危険だ。たとえば今回で契約を打ち切ることをちらつかせながら、次の更新で終わりになる契約を提示すると、労働者は精神的にサインせざるをえない状況に追い込まれる。こうしたやり方を嫌う裁判官によって雇い止めが無効とされる可能性もある。

 また改正労働契約法では、5年経過後に無期転換しないことを条件に契約を更新することも無効とされている。

 「65歳以上も続けて雇用する場合、企業にできるのは、通算5年経過後の契約更新後に労働者にお金を払って無期転換権を事実上買い取るか、就業規則に“第二定年”を定めておくことぐらいでしょう」(同)
 
参照:プレジデント

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